森林保全で温暖化防止を ①

 

熱帯林破壊

  

 

起こす 

 

 

 

原生林保護が一番優れた策!―

 

  

「森林減少を抑えることが、新規の植林・再生林の実施より即

性があり、CO2レベルを下げるために有効である」と『2002

世界森林白書』で述べている。つまり森林問題では、原生林の

保護が一番温暖化防止に繋がるのではないだろうか。

 

Bali会議で合意(2007
Bali会議で合意(2007

1、熱帯林破壊も温暖化の原因

 

 19世紀まで、大部分の森林伐採・破壊と劣化が温帯地域で起きた。

20世紀後半になって、熱帯林の商業伐採・乱開発、牧場経営等で、森林減少の速度が著しく、熱帯林の伐採が地球の気候変動を起こす陸上生態系の主な炭素発生源となっていたらしい。FAO(世界農業機関)は、「1980年代の森林破壊によるCO2の排出量は、全ての人為的炭素排出量の14に当たる」と推測。つまり、熱帯林の減少が温暖化・気候変動に拍車をかけていた。

 

 一方、寒帯のロシアの北方林などの原生林を破壊すれば、その地の

森林の再現が難しく、メタンガスを多量に排出させ、CO2の排出量も増 

え、温暖化を促進させる。2010年の異常気象で西部ロシアの泥炭湿地

からCO2を多量に発生したらしい。また、ロシアから木材輸入の輸送エ

ネルギーは、国内材利用よりCO2使用量が激増する。

 

 温暖化の進行は森林生態系に大きなダメージを与えるが、この時お

こる森林破壊が二酸化炭素の排出源となり、再び温暖化を進行させる

と予測されている。このように、森林と温暖化は密接に関わっていて、

森林破壊が温暖化を加速させているらしい

 

 

2、インドネシア、アマゾンの例・・

            CO2排出削減課題 

 

                                   

 例えば、アマゾンやインドネシアでの森林破壊だ。1997年、インドネシアで 

のアブラヤシ農園などの開発や小規模火災から広大な森林の火災に拡が

り、一部がマレーシアまで飛び火して被害を拡げたことは記憶に新しい。そ

して、ブラジルの2005年の例だが、「アマゾン開発のための森林の焼き払

いがブラジルを世界有数の二酸化炭素排出国に押し上げている」とBBC 

newsが報じる。ブラジリア大学のCarlos Alberto Gurgel教授は、「毎年

の数百万haの焼き払いを通して、ブラジルは途方もなく高レベルの二酸化

炭素を排出」と語ったという。                                        

 

 この報告は、「地球の肺」とも呼ばれる世界最大のジャングル・アマゾンの

森林の焼き払いを通し、違法開拓を研究したブラジルと米国の大学研究チ

ームにより発表された。ブラジルのメディアは、研究によると、森林破壊は

毎年2億トンの二酸化炭素を大気中に注いでいると伝えている。これ

を化石燃料の焼却による排出に加えると、ブラジルは年に55千万ト

ンもの二酸化炭素を出していることになるらしい。         

 国立宇宙研究所の気象学者・Carlos Nobreは、「森林破壊で、ブラジル

は確実に地球上のトップ10排出国に入る」と言う。2000年の炭素換算二酸

化炭素排出量は世界全体で230億トンほどとされており、米国の排出量56

億トン(24.4%)、中国が28億トン(12.1%)、ロシア16億トン(6.2%)、日

本が12億トン(5.2%)、インド11億トン(4.7%)などに比べるとかなり少な

いが、ドイツの7.8億トン(3.4%)、英国の5.8億トン(2.5%)に次ぐトップ10

排出国に入るらしい。

 

 また2006年に発表されたWetlands Internationalの報告では、インド

ネシアでは、ラミン、ウリンなどが生えている泥炭湿地林の破壊により、火災

によるCO2排出が約14億トン、違法伐採やアブラヤシ開発で土壌の変化

によるCO2排出が6億トンとなり、インドネシアは合計20億トンのCO2

出で世界3位に相当する排出量となる

 2009年はカリマンタンで4ヶ月も雨が降らず、ウータンの調査で、晴れな

のに日中に泥炭湿地からの火災、Hot Spot以外からの自然発火での家

屋や畑等の火災、燻した大気などで、Co2が大量に発生したらしい。

 

 温暖化を放置すれば泥炭湿地の火災で、海面0m近くの土地の泥炭

層が燃え地下が沈むか、島の一部が消滅する恐れがあると2007

12月にWetlands Internationalだけでなく、インドネシア地方政

府が、「NGOsと一緒に森林保全を進めなければならない」と声明を出

している。

2010年泥炭湿地調査
2010年泥炭湿地調査
泥炭湿地からの発火続くカリマンタン
泥炭湿地からの発火続くカリマンタン

 今後各国も森林保護を図るため、200712COP13バリ会議で

全世界の政府が一致して温暖化防止に森林保全を進めることを合意

した。このことは、NGOsにとり、大きな前進を勝ち得たといえる。

 

 

3、原生林,2次林を壊して、再度造る安易な植

 林も問題

 

 また、森林の二酸化炭素吸収源としての役割が注目を集めている

が、共同実施などによる安易な植林は、地域の生態系を破壊するのみ

ならず、地域住民の生活基盤を奪うことにもなりかねない。  

 進行している世界的な森林の破壊は、現在も歴史的にも二酸化炭素

の大きな排出源となり、温暖化を進行させる原因ともなっている。CO2

削減対策を取る上で、熱帯材、寒帯のロシア材、チリ材などの外材利

用より、国産材で持続可能林と認証された材を使用すべきではないで

しょうか。

 

 この3-6年で、秋田、宮城、岩手、大分、鹿児島、宮崎県らをはじ

め、地産地消の動きが出始め、国産材や地元の間伐材の有効活用が

提案されている。これは頼もしい限りだ。   

 2005年2月、京都府林務課は《ウッドマイレージシステム》を導入す 

ると発表した。同課は、《原生林材を10年で15%削減し、違法材を使

わずの方針で、また地元の京都府産材の利用でどのくらいCO2削減

に寄与できるかの測定を、ウッドマイレージで決めましよう》と。このよう

に、素晴らしい取組みも始まっている。

 

 森林の伐採を見合わせの方が、新規の植林より安価で簡単に行え、

持続的森林経営で、よりコストも安く、haあたりの炭素貯留量も大き

い。FAOは、「森林減少を抑えることが、新規の植林・再生林の実施よ

り即効性があり、 CO2レベルを下げるために有効である」と『2002世

界森林白書』で述べている。つまり森林問題では、原生林の保護が

一番温暖化防止に繋がる。

 

 

(写真)空から見たフィリピンの森林破壊[1988年]。20世紀初めか

    ら伐採された。

1900年代から日本等に森林伐採されたフィリピン・ミンダナオ島(1987年)
1900年代から日本等に森林伐採されたフィリピン・ミンダナオ島(1987年)