世界の熱帯林を守ろう! Save the Earth! 

 

 

熱帯林の破壊

 

 世界の陸地のうち1/4が森林です。森は空気を作り、水を蓄え、土を作り出します。しかし、熱帯林は1950年以降、異常な速さで壊されてきました。世界の熱帯で原生林が残っているのは、ボルネオ島、アマゾン、コンゴ流域、パプア・ニューギニア等。このままでは、すばらしい原生林が50年後に消えるとも言われています。アマゾン、ボルネオだけでなく、以前は多くの先住民が原生林を切らずに森で暮らしていました。ところが各国の大手木材企業は地方政府や軍と結託して、ただ同然で森林を伐採する権利を得て切り続け、日本、アメリカ、EU、中国等へ輸出したのです。

 

ボルネオ狩猟採集の先住民プナン人が2001年に話した内容を紹介します。

「《森は宝だ》! 人間は何もしなくても、森が多くのものを生み出す。熱帯の森は多様性に富む。古来から私たち先住民は、森の中で暮らしてきた。森があるから生活が豊かで、お金を使わなくて済んできた。ところが伐採企業は【金・金】という」と故ケラセイ・ナアーン村長が言いました。彼は村を上げて長らくマレーシア・サラワク州の大手木材企業Samling木材社と闘ってきました。

 

日本の責任も重大

 

2000年まで日本は世界一の木材消費量でした(現在3)。日本はフィリピン、インドネシア、マレーシア等で伐採したり、そこから熱帯材を大量に購入していました。だから「木食い虫・日本」といわれたのです。日本の責任も重大です。

1990年から各国や国際機関は、木材の「認証制度の推進」、「持続的な森林経営のための指標」を決めましたが、保全へ効果的な対応になりませんでした。2002年、世界資源研究所(WRI)は「熱帯林破壊の最大の脅威は木材や紙生産への商業伐採であり、アブラヤシや大豆等の農地への大規模転換、牧場開発、鉱山開発がそれに続く」と指摘しています。

 

196090年   森林が18950haに減少。毎年1300haが減少

199095年   熱帯林は年0.65%減少(原因は商業伐採、牧場開発等でアジア

           42%、中南米37%)

19902000年 熱帯林は毎年730ha破壊

20002005年 熱帯林は毎年890ha減少

 

 これでは大変と19952005年にかけて多くのNGOsが動きました。特に問題にしたのが【違法伐採】です。

 1998年にグリーンピースや地球の友(FoE)等が英国政府へ働きかけました。インドネシア、アマゾンでは保護区も木材マフィアが違法な伐採を続けていたからです。

 例えば、インドネシアの中カリマンタンのタンジュン・プティン国立公園は1995年以降違法伐採が続けられ、オランウータンなどの動物生存の危機もあり、英米NGOEIAとインドネシアNGOTelapak(テラパック)が1998年から2003年にかけて同公園の違法伐採を調査し、告発しました。ラミンという泥炭湿地に生える樹が違法伐採され、各国へ密輸されていたのです。

この樹が日本へ違法取引されたことが、私たちウータンとTelapakの調査で判明し、2000年4月に当時の谷津農林水産大臣、橋本元首相に「違法材停止」を依頼しました。続いて同年11月、私たちウータンは国内のNGOsや世界のNGOsと一緒に国際熱帯木材機関(ITTO)にも違法伐採、違法材取引を止めるよう申入れをしました。

またインドネシアFoEとアメリカのRAN(熱帯雨林行動ネットワーク)、グリーンピースも違法材を買わない運動を起こし、WWFも違法伐採反対の宣伝をしました。

 

熱帯林破壊から減少、【合法材使用】へ

 

20002005年のNGOsの活動が政治をも動かし出し、EUでは違法材排除の議決や政策が決められました。日本でも2006年にグリーンな木材調達の政策のもとに動き出しました。マレーシア、ナイジェリア、ミャンマー、マダガスカル等を除き、世界の多くの木材伐採国も合法材を使用する流れになってきました。

英国政府は「2010年に違法な木材生産の合計は2002年以降、22%下落した。ブラジルのアマゾンでは違法伐採が5075%減少し、インドネシアで違法伐採が75%減少したがマレーシア企業が密輸を続けようとしている。だが、NGOsからの圧力の増加は、多くの国での違法伐採問題を改善をした」と報告しています。 ITTOは「2005年の報告では持続可能な森林経営は僅か5%だったが、2010年にはその面積は10%に増加した」と報告しています。明るい希望です。

今の世界の流れは【合法材使用】です。しかし、日本へ今も違法な木材や原生林材が輸入されており、この問題を解消しなければ大変と指摘されています。何が問題なのでしょうか?

 

 

森林減少から森林再生へ! 動き出そう! 目指せる!

 

1つは、違法伐採等を止めれば温暖化防止に繋がるということです。もし違法伐採が減っても大豆・牧場開発が続けられるなら、アマゾンは2025年までに大打撃を受けるといわれています。ジャングルが乾燥して、大地に変化が起こり、降雨量が減り、生態系に打撃を与え、温暖化を進めると学者やIPCCの気候変動調査の報告が警告しています。

 インドネシアには泥炭湿地が広がっていて、伐採、火災、アブラヤシ開発で大きな破壊が進んでいます。生態系も壊れ、泥炭湿地から大量の二酸化炭素(CO2)が放出され、森林劣化や土地利用変化でのCO2排出量を含めると中国、アメリカに次ぎインドネシアは世界3位となります。既に破壊された泥炭湿地から毎年多くのCO2が排出されています。Wetlandsインター・インドネシアは「違法伐採停止と泥炭湿地の保全をすれば、世界の1015%のCO2を削減できる」と指摘しています。

2007年頃から各国の政府が動き出して、「ブラジル、インドネシア、カメルーン等における違法伐採が減少し、森林面積で約17ha、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)は12億トンとなった。完全に違法伐採を停止すると、半年で14.6億トンの放出を防止することになる」と英国政府は2010年に報告しています。これは重要なことです。

森林破壊や温暖化防止を放置すれば2050年に3.24.8℃の温度が上昇し、南極、ヒマラヤやシベリアの氷が溶け出し、更にCO2やメタンを大量に排出して、6m以上水面が上昇し、多くの都市で水没の恐れや、作物の生産と水の確保が大変になり、生態系も大異変すると言われています。

2つ目に重要な点は、原生林やその周りの二次林の保護です。切られ過ぎた森林は元の森には戻れず、多くの生態系が壊れたままとなります。マレーシア・サラワク州やアマゾン奥地では、未だに原生林が破壊され、生活の場である森が壊され、多くの先住民が問題視しています。

一方、違法伐採された中カリマンタンのタンジュン・プティン国立公園では、Friends of National Parks FoundationFNPF)や村人たちが立ち上がり、地元産の植林をしています。Wetlandsインター・インドネシアや多くのインドネシアNGOsも森林再生に動き出し、森が再生し始めています。この地元産の植林をすることによって、森林を再生させることが必要です。早生樹は生態系を復元できず、火災が起きれば大量のCO2を排出するので、大変問題です。今こそ森林再生と原生林保護に向かって、みんなで協力していきましょう。

ウータンは2010年からFNPFWetlandsインター・インドネシアやTelapak等と協力して地元産の植林活動を始めています。既にタンジュン・プテイン国立公園で3ha、ラマンドウ保護区でも3haの植林を実施しました。また、原生種の植林をすれば、多くの動物達も戻ってくることがわかりました。みんなが生態系保全、温暖化防止、原生林保護、森林再生に努力すれば、世界的なピンチを救うことも可能です。ウータンや国内、世界のNGOsと協力して活動しませんか。

「何も出来ない」、「どうしたらよいか判らない」、「このままで別に良い」というなら、多くの人間の生存だけでなく、地球上の生物の命を奪うことにも繋がります。放置すれば将来の人間の生存は確実に危うくなるのです。

出来ることから始めましょう。今、動き出そう!