FNPF(フレンドオブナショナルパークファンデーション)のリーダー‘バスキ氏’

 

「森でずっと暮らしている男がいる」 その男の名はバスキ。
僕は、オランウータンのような人を想 像していた。

だが、初めて会ったバスキは、はにかんだような笑顔と控えめな話ぶりの好青年という 印象だった。 


バスキは2か月に一回ほどしか町へ戻 らない。生活の大半を森の中で生活している。
12人兄弟の11番目の彼はジャワ島 で生まれ、カリマンタン(ボルネオ)の大学に通った後、 森の生活に入った。兄弟はみな街で暮 らしていて、彼のことを変人だと思っている。
しかし、お姉ちゃんはバスキが土地を 買うのにお金を貸してくれた。


「森での生活は俺にとってReligionなんだ」

彼は人が多くビルの建ちならぶ街では生活したくないという。
森の中で作物を植え、自給自足で暮ら す。家は自分で建てた。

都会が嫌いな彼だが決して人間嫌いでコミュニケーションが苦手というわけではない。

バスキの家はパームオイルプランテーションと森の境目にある。それには理由がある。
プランテーションの拡大はどんどん進 み、河をはさんで国立公園の向こう側の土地はすべて なくなろうとしていた。バスキとその 仲間は土地を買うことでプランテーションの侵略を防いでいるという。


「どうやって土地を買えたんだ?」 

僕の質問にバスキは答える。

「もちろんお金なんてなかった。お金ならプランテーションの会社のほうがたくさんあ る。
僕は土地を所有しているクマイの村の 人へ何度もお願いをした。
時には家へ呼んで一緒に食事をし、酒 を飲みながら話をした。
森が無くなるとどうなるか、土地をア グロフォレストリーとして利用すればどんな利益があるか、 プランテーションが村の人にとってど れだけ悪影響か、どうやって森を守っていくか・・」お金はないが土地を売ってくれないか?というバスキの頼みは受け入れられ彼は1haの土地を買った。そのお金は親や姉 が貸してくれた。


そのように仲間と買っていった土地およそ30ha
FOREST FARMING AT N.P.BUFFER.ZONE PROJECT
として進行している。

森とプランテーションの境目に作られた農地と家。
そこでさまざまな農作物や薬草、木の 苗を作っている。
育てているのはタンジュンハラパンの 住人。かつて彼らも違法伐採などに携わっていたらしい。
今はここに住み込み農作物を育ててい る。

バスキは彼をこのプロジェクトのリーダーに育ってほしいと考えている。
いずれは村全体を違法伐採、森の破壊 から新しい農業への転換へ動かしたい。


バスキはいう。

「開発に対してStop! というのは簡単だ。だけどそれでは解決しない。
村の人は貧しい。食べるためにはなん でもしようとする。
そういう人に時にフレンドリーに、時 には一緒に食事をしながら、時間をかけて何度も説明する。
それはストレスのかかる作業だけど一 番有効なんだ。」

時々プランテーションのオーナーが土地を売ってくれないか、と話をもちかけてくる。

答えはもちろん「NO!」だ。